Traveling to Prague 2

2026年01月03日

プラハは建築物や景観も含めて、訪れるべき観光名所が目白押しだった。それは美術館や劇場、博物館も同様である。全て行きたいのは山々であったが、時間の制約もあったので、今回の旅ではMucha美術館および国立博物館に訪れることとした。どちらも事前に公式webサイトからオンラインで入場券を購入することが可能なので大変助かった。ちなみにMucha美術館は大人1人が300 Kč(チェココルナ: 約2,300円)、国立博物館は360 Kč(約2,700円)とリーズナブルなところも魅力的だ。


Mucha Museum

生来、美術の素養があるわけではないが(高校生の時に美術を選択科目としていたくらいで)、美術品を鑑賞するのは好きだ。実はこの美術館を訪れようと思った契機は土屋先生の勧めで、Muchaがスラブ民族の歴史を描いた大作「スラブ叙事詩」を鑑賞したいと思ったからであるが、残念ながらプラハから離れたモラヴィア地方のモラフスキー・クルムロフ城に展示されているとのことで、今回は美術館に行ってMuchaを知ることから始めてみることにした。(展示場をプラハの美術館に移す計画もあったそうだが、大人の事情が色々絡み合って、今のところ2031年まではお城で展示されるらしい。数年前に日本にも上陸したこともあるのだそう。)いずれにせよ、留学中にモラヴィアにも行くことになるだろう。

美術館内は割とこじんまりとしていて、とても回りやすかった。入り口すぐの綺麗なステンドグラスが入場者を迎えてくれた。Alphonse Mucha (1860-1939)はチェコ出身で、今でこそアール・ヌーヴォー(19~20世紀に欧州で流行した「新しい芸術」的価値観のことらしい)を代表する芸術家だが、それまではしがない挿絵画家だったそう。特徴的な画風として美しい女性と色鮮やかな植物、曲線美、円形の背景などが挙げられる。広告用ポスターなどの作品が大変好評だったそうで、美術館内には「CISMONDA」(1894)や「黄道十二宮(星座)」(1896)をはじめ、「JOB」(1896)、「LORENZACCIO」(1897)など、好事家たちにはたまらないであろう作品が数多く展示されていた。作品の発表年をあえて強調したが、素人目ながら、色使いや配置は現代に創作されたと言われても遜色ないほどに洗練されたもののように個人的には感じた。どうやら大阪にも展示場があるようなので、学会出張の際に行ってみるのもいいかもしれない。Mucha作品のもう一つの大きな特徴が使用されている独特なフォントである。これがとても可愛らしかったので早速DLした。学会発表スライドとかに使ったら怒られるかな。売店で実際に使用されていた、Muchaデザインの切手が販売されていたので購入して美術館を後にした。


NÁRODNÍ MUZEUM

Mucha美術館を出ると、外気がとても冷たかったので、出店でホットワインを注文して体を温めてから、広場を抜けて国立博物館へ。正面から見ただけでもその出立ちに圧倒されるばかりであった。すぐ隣に国立博物館新館があったが、今回は国立博物館のみとした。この博物館は総合科学博物館として機能していて、チェコの歴史学から音楽・地質学・鉱物学・生物学など様々な分野に関する展示物を楽しむことができる。大層人気らしく、どの時間帯に来ても入場に行列ができているようだった。これに漏れることなく列に並び、寒さに耐えながら入場を待った。

エントランスで入場券をかざした途端に、壮麗な階段が迎えてくれる。どこかで見たことがあるなと思っていたら、「ミッションインポッシブル」だ。自身は特段ミーハーではないと思っているが、当時の撮影がここで行われて、トム・クルーズもここにいたのかと思うとなんだか感激だった。観光客のほとんどがここで写真撮影していた。階段を上がり、壁画や模様、ガラスなどの建築美を堪能していると、その先のホールもまた壮麗で、特に天井の対称的な模様や描かれた絵画は見る者の首をへし折るくらい釘付けにするものだった。

日本はもちろん、ポーランドでも総合科学博物館を訪れる機会があったわけだが、今回特に引き寄せられたのは鉱物コレクションの展示だった。一室に様々な大きさ・形状の鉱石が展示されており、その豊富さたるや、そこにいるだけでも一日過ごせそうな勢いだった。我々の研究の性質上、有機分子が形成する微小な結晶(単結晶:もちろんこれはこれで美しい)を見ることはよくあるが、自然が作り出した無機化合物による「巨大な」結晶を多種多様に見れる機会はそんなにないと思う。鉱石マニアの扉が開きそうな気がした。気に入った鉱石の一部をいくつか紹介したい。Krokoit (A): コロコアイト(PbCrO4)、紅色が一際輝いてて良い。Epidot (B): エピドート(Ca2FeAl2(SiO7)(SiO4)O(OH))、化学式が少し複雑なケイ酸塩だけど、深い緑と形状が良い。Almandin (C): アルマンディン (Fe3Al2(SiO4)3)、こちらも鉄とアルミニウムが混合したケイ酸塩。もう12面体みたいな形状がかっこいい。Malachit (D): マラカイト (Cu2CO3(OH)2)、特徴的な縞模様から「孔雀石」としても有名。切断面が違うと模様が異なって見えるのも良い。Azurit (E): アズライト (Cu3(CO3)2(OH)2)、有機化学をやっていると「アズレン」を連想させる特徴的で魅力的な藍青色の結晶。マラカイトとは親戚みたいなもの。Sugilit (F): スギライト (KNa2(Fe,Al,Mn)2(Li3Si12)O30)、なんと日本のしかも愛媛県の岩城島で初めて発見された鉱石だそう。日本で発見されたスギライトは黄褐色だそう。南アフリカでも同種の鉱石が発見され、こちらはマンガンの割合が多く紫色になるのだとか。鉄やアルミニウムの成分の違いでも色が変わる興味深い鉱石。名前の由来は九州大学の杉健一先生から。Pyrit (G): パイライト (FeS2)、硫化鉱物は外せない。このまさに金属だと主張せんばかりの黄緑色の輝きが○。Antimonit (H): アンチモナイト (Sb2S3)、こちらも硫化鉱物。化合物の酸化還元をやっていると馴染みの深いアンチモン(Sb)。渋い銀灰色の針状結晶が美しい。調べてみると興味深いことに、日本の産出地は愛媛県市之川鉱山らしい。なんだかんだ縁があるのか。Cyanotrichit (I): シアノトリカイト (Cu4Al2SO4(OH)12·2H2O)、写真の青い部分。名前に「シアノ」があるからシアン化物なのかと思いきや「藍色」のギリシャ語からとっているらしい。組成式からも察せられるように、含水結晶であることから、非常に脆い。でも色は綺麗。Fluorit (J): フルオライト (CaF2)、「蛍石」の名を冠した有名な鉱石。多彩な色を有し(博物館の展示だけでも数十種類)、サーモルミネッセンスや紫外光照射による蛍光発光を示す面白い石。今度演示実験で使うといいかも。Kammererit (K): カメレライト (Mg5[(Al,Cr)2Si3O10](OH)8)、見事な赤紫色をしたケイ酸塩鉱物。しかもこれの石も蛍光発光を示すというのだから興味深い。Vanadinit (L): バナジナイト (Pb5(VO4)3Cl)、名前と組成式にある通り、バナジウムを含む赤色の鉱石(写真の粒状の部分)。写真では判別しづらいが、六角形状の結晶が美しい。

この他にも大小・数多の綺麗な鉱石・隕石が充実した展示室でつい夢中で写真を撮ってしまっていた。この他の分野、特に生物関連の展示物も巧みに配置されており、入場者を虜にする演出がなされていて非常に面白かった。鯨やサイの骨格標本やマンモスの模型もまた、ここで見る価値のある展示物だった。