"The Art of Building Small" by Prof. B. Feringa
プラハから帰ると、ワルシャワは真っ白に雪化粧されていて、やはりここは極寒の地なのだと再認識することに。一方で、ワルシャワに到着して、研究所からドミトリーに入ると少し安心している自分がいることを自覚する。これが4ヶ月生活した成果か。しかしながら、厳しい寒さにはやられたようで、しっかり風邪をひいた。どうやら鼻と喉からきているようだ。こういう時、日本から薬の類を持ってきていればよかったと思うものの、残念ながら、胃腸薬しか持ってきてない(食あたりが不安だったけど、杞憂だった。近くに薬局もあるので心配はいらないはず。)日本にいても発熱しない限りは薬を飲まないので、元旦からの約1週間をドミトリーで静養することに充てた。そんなこんなで、研究所での新年がスタートし、新しいテーマも決まり、残り3ヶ月程のワルシャワでの生活を完了させるために種々の標的化合物の合成を完了したいところだ。
新年最初の金曜日に当たる今日は、B. Feringa教授(University of Groningen (Netherlands))の特別講演があるとのことで、拝聴するためにワルシャワ大学の化学部に向かった。ワルシャワ大学(Uniwersytet Warszawski (The University of Warsaw))はポーランドを代表する大学であるのはいうまでもない。調べたところ、理系と人文系でキャンパスが異なる位置にあった。今回は化学部のあるOchotaキャンパスへ向かった。キャンパスが違うところにあると言っても、公共交通機関(長く見積もっても20分程度)で簡単に行き来できるところが非常に良い。北里のそれとは天と地ほどの差がある。建物に入るのに身体検査でもあるかと緊張したが、誰でも入れる感じだった。少し学部棟内を歩いて回ったが、講演会場がどこにあるのか全く分からなかったので、受付のお姉さん?に尋ねて3Fにある大講義室へ。すると前方の壁に大きな周期表があるではないか。純粋にかっこよかった。この講義室の名は"Aula im. Wojciecha Świętosławskiego"。ポーランドの物理化学者であり、「現代熱化学の父」であるヴォイチェフ・シフィエントスワフスキ先生の名を冠している。有機化学では「共沸」でよくお世話になっている先生だ。The 大学の講義室といった部屋で、早めに席を陣取って、講演が始まるまでの間、周期表を眺めていた。
満員御礼という言葉を象徴するかの如く、講義室はあっという間に満席になり、階段で座りながら聴く学生もいるくらいだった。それもそのはずで、Feringa先生は2016年に「分子マシンの設計と合成」でノーベル化学賞を受賞されており、有機化学ならびに超分子・分子ナノテク界隈におけるスーパースターだ。同時受賞されたJ.-P. Sauvage先生の「鋳型合成」に立脚した分子トポロジーの展開や、故J. F. Stoddard先生の「ダンベル型分子スイッチ」や「分子筋肉」の開発に関する研究は、現代超分子化学の概念を押し広げ続けている。(Stoddard先生が発表された"Moleuclar LEGO"(JACS, 1992, 114, 6330)は大好きな論文の一つだ。)Feringa先生は光や熱などの外部刺激に応答する「分子モーター」の開発を精力的に行なっており、講演タイトル「小さな世界で構築する美」さながら、小さな世界で動く分子が如何に美しいか、それを制御できるようになることが如何に重要かについて、時折ジョークや研究時のエピソードを交えながら講演してくださった。講演の最後にFeringa先生は学生や研究者に向けて"Discover your Talent", "Follow your dream", "Discover your energy (what's your passion?)","discover your limit (how high you set the bar)", そして、"An adventure in the Unknown"と投げかけていた。研究を進めてる上で当たり前にあるものだと思いつつも、どこかで消えかけてしまいそうになる感情を常に自分で自問し、鼓舞し続けることが重要なのだと、熱烈に訴えていらした。有難いお言葉だ。これは我々研究者のみならず、研究を行う学生にも(Feringa先生もyoung generationが大事だと仰っていた)伝えていかねばならないことだろう。さらに最後にはレオナルド・ダヴィンチの言葉で締め括られいたのでここに共有したい。
"Where Nature finishes producing its own species man begins, with the help of Nature, to create an infinity of species." –Leonard da Vinci–
"Imagine the unimaginable"