Christmas Party & Teatr Wielki

2025年12月20日

論文が無事に受理され安心したのも束の間、有機化学研究所に来て3ヶ月の成果発表をするための準備やら何やらでバタバタしていたら、あっという間に12月末になり、街中はクリスマスおよび年越しムードになっていた。英語でのプレゼンは苦手でまだまだ勉強中だが、成果報告会をなんとか乗り切ることができてよかった。ポーランドでの滞在も半分を終えたところで、現在行っているテーマを完成させつつ、新年からは新規プロジェクトにも挑戦することになりそうである。

新規化合物の合成をしていると、全く予想していなかった生成物がひょっとできたりする。その構造を明らかにできるのは有機合成化学の醍醐味だと常々思う。どのような経路・機構で形成したのかを明らかにするのは一筋縄ではいかないが、これを考えるのはとても楽しいし、新規骨格であればなおのこと魅力的だ。こと研究においては、自身の経験や知識を元に、狙った通りの化合物も得ることも重要な要素であるが、この「予想外」の積み重ねこそが「新たな発見」であり、「独創性(serendipity)」へと繋がる重要な手がかりとなるのはいうまでもない。研究の厚みを拡張する上で見逃せない要素だ。と言ってもそんな高い頻度で新たな発見ができるわけではないので、常日頃から反応や化合物が示す性質をよく「観察」する習慣を身につけておかなければならない、と今一度自戒したい。

12月19日はグループでクリスマスパーティーを行った。朝から皆でdumpling(餃子みたいなもの、ピエロギもこの中の一種)を作って焼いて準備していた。各自で手作りの料理やお酒を持ち寄ってくるのが基本的だそう。巻き寿司を作って持参しようとしたけど、こちらで売っている海苔が巻き寿司に適したものではなく、やむなく辞退した。餃子やスイーツはどれも逸品だったので少し申し訳ないと思いながら堪能した。お酒は基本的に赤ワインや白ワインが好まれて飲まれるらしく、度数のきついものにのたうち回っているとメンバーは愉快そうにこれがポーランドの酒だと教えてくれた。日本でいうところの忘年会みたいな感じでとても楽しい時間を過ごすことができた。

クリスマスパーティーの後、Danielに誘われてTeatr Wielki-Opera Narodowaへ。欧州のオペラやオーケストラには元々とても興味があったので、とても楽しみだった。到着して早々に劇場の建築に圧倒された。Danielとスパークリングワインを飲みながら、ご令嬢と彼氏と待ち合わせをして、4人で有名な"Pinocchio(ピノキオ)"を鑑賞した。ドレスコードが必要な場所に行くのも初めてだった(劇場のwebページには"Most of opera guests dress smartly for a performance. However, what matters most is what you experience at the Teatr Wielki, not how you look like."と書いてあり、「最も重要なのは、あなたがどう見えるかではなく、あなたが劇場で経験することだ」と記されていて、大変感銘を受けた。)。幼少期の記憶を遡ると、この物語の印象は「嘘をつくと鼻が伸びてしまう」=「嘘をつくのはいけないこと」だった。しかしながら、劇中にその描写はなかったので少し驚いたが、今回の劇から受けた印象は、たまたま「命」を持った良くも悪くも「無」の木こり人形が様々な環境下で善意や悪意に晒されながら、「個性」や「自我」を確立し、「人間」になるための物語だったということだ。劇中では挿入歌のみでセリフの類は一切なかったが、演技と演出だけでこれらを伝えているのは絶賛の一言に尽きる。物語をこのように捉えることができたのは自身が歳を重ねて物の見方が変わったというのもあるだろうが、非常に刺激的な体験をすることができた。