
Dr. Masafumi Ueda
Researcher in Organic Chemistry: Molecular Design toward Materials

このページは、北里大学理学部化学科「分子機能化学講座」のサブグループ、上田グループの専用ページです。
研究内容の紹介、関心のある研究や個人的なニュースなどについて気ままに更新する予定です。
私たちのグループでは、有機化合物の分子構造と物性の相関に着目した「構造有機化学」や「有機物理化学」という分野に焦点を当てて新規分子骨格を創出し、分子構造に起因した特異な物性発現を実現するために、大学院生および学部生と共に研究を進めています。
News
2026年3月4日 Asian J. Org. Chem.誌に論文がアクセプトされました。
2026年2月25日 Chem. Asian J.誌に論文が掲載されました。
2026年2月2日 Chem. Commun誌に掲載された研究のプレスリリースを行いました。

Our Research
Synthesis and Chracterization
Synthesis and Characterization
初めに、我々の研究は分子設計から始まります。次に、自分の手で作り出したい新規骨格を構築するために、既存の化合物から様々な過程を経て標的化合物の合成を目指します。この段階において、「有機合成化学」が非常に強力なツールになります。フラスコの中の原子・分子間の衝突をはじめとする化学反応を想像しながら、効果的かつ選択的に、原子間結合の開裂や再結合を経由して、設計した分子骨格の構築を達成します。一方で、異なる反応が起きてしまうことで収率が低下し、予期せぬ副生成物が多く産出されることも珍しくありません。有機化学の研究において、最も時間を割き、苦労する作業になります。この険しい行程を経て、世界唯一の完全にオリジナルな分子を創造します。
続いて、合成して得られた化合物が設計通りの構造になっているかどうか検証する必要があります。有機化合物は炭素(C)や水素(H)、窒素(N)やリン(P)などを含む場合が多いので、核磁気共鳴分光装置(NMR)が一般的に用いられる手法になります。その他にも、固体であれば融点測定、化合物が有する官能基を確認する赤外分光スペクトル測定(IR)、芳香族化合物を有する場合には溶液の吸収スペクトル測定を行います。加えて、分子量や分子式、同位体情報を得ることのできる質量分析測定や、化合物を構成する元素の種類や元素の構成比率を決定する元素分析測定も有力な方法になります。化合物が固体の場合、単結晶化することにより、分子を一定の方向に配列させることができます。この単結晶にX線結晶構造解析測定を行うことによって、3次元的な分子構造を最終的に決定することができます。このように、多角的な測定を種々行うことで標的化合物の構造が間違いないことを確かめます。これらの情報を正しく解析するために、「分子分光学」の知識が役に立ちます。



Our Research
Optical Materials
Optical Materials
太陽はその内部で、水素(H)をヘリウム(He)へと変換する核融合反応を起こし、莫大なエネルギーを熱および光として放出することで光り輝いています。太陽光は地球へと降り注ぎ、天候をはじめ、自然界の生命活動に必要なエネルギーを与えてくれます。太陽光によって生じるオーロラや虹は私たちが実際に観察することのできる不思議な光の性質の一部です。この他にも雷、マグマなどの自然現象からも光を観察することができ、植物(キノコ)や生物(ホタル)も発光現象を利用して生きる種が知られています。このように自然界は「光」で満ち溢れ、我々はその現象を神秘的なものとして捉え、魅了されてきました。そして人類は現代の有機EL素子に代表されるように、この「光」を巧みに材料化し、利用することで目覚ましい社会発展を遂げてきました。現在もなお、「光」は科学者たちの興味を強烈に惹きつけ、圧倒的な情熱と共に研究が進められています。
そのような「光」を有機化合物からも取り出すことができます。有機化合物も通常の状態(基底状態)で光を吸収すると、高エネルギー状態(励起状態)へと遷移し、すぐにまた元の基底状態に戻ります。この戻る過程で余分なエネルギーを熱または光として放出します。取り出せる光は化合物によって異なりますが、「蛍光(Fluorescence)」と「燐光(Phosphorescence)」の二つに分類されます。通常、我々が観測しているのは、色として判別可能な可視光領域の波長(380〜780 nm)になります。この性質を利用して、有機発光色素の開発が可能となります。
しかし一方で、化合物は構成する原子間の結合伸縮や回転などにより、伸縮・並進・振動などの運動を絶え間なく続けます。このような挙動は励起状態において、得たエネルギーを熱として放出してしまう原因となってしまいます。つまり、効率良く発光する色素の分子設計において、これらの挙動を如何に抑制できるか、という点が重要な鍵となります。加えて、一般的に有機発光色素は単分子の状態で効率良く発光する場合が多く、高い濃度、例えば固体状態では発光効率が著しく低下する傾向にあります(濃度消光)。強い発光を示す有機発光色素の開発には、構成する原子の数や種類、結合様式、単分子の挙動、分子集積状態の挙動など、種々の要因を解決する必要があり、せっかく合成に成功した化合物でも実際にはあまり光らない、ということが少なくありません。これまでに様々な有機発光色素が開発されているものの、その性質が分子骨格に依存する以上、種々の分子骨格について検討する必要があり、常に新しい分子設計指針を打ち立てる必要があります。従って、分子構造と発光特性の相関について明らかにすることはこの分野の命題とも言えます。
我々のグループでは、一見すると発光特性に不向きな「湾曲構造」を組み込んだ色素の開発を積極的に行っています。このような分子系は、希釈状態(単分子系)では湾曲部の分子運動に起因した熱失活により、発光効率が低下するものの、分子を集めることによって一連の運動を抑制し、発光効率を高めることが可能になります。このような現象は「凝集誘起発光(AIE)」と呼ばれ、前述の濃度消光とは相反する性質を有することから、材料化学の分野において注目されています。さらに、合成した湾曲色素分子が希釈溶液中、極低温(液体窒素温度(77 K))において「強燐光発光」を示すことも見出しており、低温条件による分子運動の抑制が燐光発光の発現(三重項状態への効率的な項間交差)に関与していることが考えれます。また、ある湾曲分子は粉末状態において、水色の蛍光発光を示しますが、外部から機械的刺激を加えると、分子配列が変化することにより、緑色蛍光発光へと変化する「メカノフルオロクロミズム」を示すことが明らかになっており、このような物質は発光色を制御できることからスイッチング色素への応用が期待できます。別の湾曲分子の単結晶においては、紫外光を照射すると長寿命の残光を示す「室温燐光発光」を観測することができ、湾曲構造を結晶構造中で固定することにより、通常困難な室温燐光を発現することが可能となります。
我々のグループでは、「湾曲構造」を活かすことで初めて発現する特異な発光特性に着目して、独自の分子を創造し、新たな設計指針を確立することを目標としています。
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上田 将史 講師 [博士(工学)]
北里大学 理学部 化学科 分子機能化学講座
〒252-0373 神奈川県相模原市南区北里1-15-1
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